キャッシュマネジメント・システム CMS (cash management system)
CMS(cash management service)は、コンピュータと通信技術を活用した銀行サービスとして、米国の大手銀行では1970年代半ばに相次いで投入されました。当時提供されたのは、ロックボックス、ゼロアカウントサービス(=プーリング)、ネッティング、金融・経済情報の提供などです。ロックボックスは、1947年にファースト・ナショナル・バンク・オブ・シカゴが大手電機メーカーのRCAのために開発した小切手現金化サービス(当初は人手によるもの)で、これがCMSの原点であるとされています。
(1)プーリング
プーリングとは、グループ企業の資金管理を一元化し、ある子会社の余剰資金を別の子会社の借入金返済に充てることでグループとして連結有利子負債を削減し、連結ベースの総資産を圧縮して、資金調達・運用の効率を高めることをいいます。
大手外資では、グループ各社の資金を本社またはそれに代わる金融子会社に集中させ、グループ各社の口座残高をゼロに保つモデルが見られました。子会社が売上などを自らの口座に入金すると、その資金は翌日までに本社の口座に送金されます。 逆に子会社が資金を引き出すと、子会社の口座は一時的には資金不足になりますが、翌日までに本社から同額の資金が補充されます。 こういった日中の資金不足にたいして、取引銀行による当座日中貸越枠の設定により、資金のやり繰りが可能となっています。
プーリングにより、グループ各社間の資金移動情報を集中的に一元管理できるため、子会社の財務状態などを日次で比較的正確に把握できるようになりますので、リスクマネジメントの面でも利点が見出せます。
(2)ネッティング
ネッティングとは債権と債務を相殺し、差額だけを決済する手法で、以前は商社にしか許されていませんでした。企業が銀行に支払っている為替手数料などの削減を図れるだけではなく、相殺決済後に受け取る外貨、または支払う外貨のみを為替ヘッジすればよいため、為替リスクが低減されます。
ネッティング手法としては、2国間で債権債務の相殺を行う比較的簡単なスキームであるバイラテラル・ネッティングと、多国間で相殺を行うマルチラテラル・ネッティングがあります。マルチラ テラル・ネッティングでは資金決済の参加者や取り扱う通貨がより多くなり、組織的にも決済の調整役を果たすネッティング・センターを設置することが普通です。
ネッティングを行うためには、当事者間の支払いと回収の決済日を統一すること、支払いと回収の通貨が違った場合に仕切りのための為替レートを設定すること、当事者間で同時相殺決済するために相手方に信用を供与すること、などが必要となります。そのためネッティングの多くは、そうした調整が行いやすいグループ間決済から利用され初めています。
(3)支払い代行
支払い代行は本社、またはそれに代わる金融子会社がグループ各社に代わって、グループ各社の取引先に代金を支払う手法で、取引先との間で実際に資金の移動が起こるので、振込み手数料の大幅な削減にはつながりません。
本社または金融子会社から銀行に対する支払い依頼件数が多くなるため、手数料のボリュームディスカウントを獲得でき、またグループ全体の支払い事務手続きを集中することで業務効率化を目指します。
CMSの導入により、一部の大手企業を除いた多くの企業では、銀行が準備したパッケージソフトをほとんどそのまま利用することが一般的です。
CMSから資金決済結果を仕訳データとして、経理システムへリンクするインターフェースを開発している企業もありますが、一般的にパッケージソフトの導入自体はさほど難しいものではありません。
CMSを提供する銀行のなかには、ASP(アプリケーション・サービス・プロバイダ)機能をネットワークを通じて提供し、企業はパソコンさえあればインターネットを通じて銀行からCMSのサービスを受けることもできます。
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